「アブダクション」を読んだ

年末からイノベーションに関する本をいろいろ読んでいたのだけどその流れでたどり着いた。これは名著でしょう。年明け早々いい本にあえてラッキーだ。

創薬ではある種の論理に基づいて、化合物の探索、合成を行う事になるわけだが、それはいわゆる定量的構造活性相関解析(QSAR)、定量的物性構造相関解析(QSPR)さらには動態特性(QSPkR)というような構造(やその特性)と変換したいパラメータの関連性からある程度論理的に探索対象を決定していくのが主流だ。ただし、このようなやり方では、ある意味推測が容易な答えしか出さないことが多いし、正しい答えの出るであろう予測の範囲もごく限られてしまうことが多い。予測範囲以外のものをアウトライヤーと呼び、予測の範囲外としてしまうが、実際にはそういう化合物の答えが知りたかったりするので常に苦労する。

我々は帰納的な推論から出発して、その枠を限りなく広げていきたいのだが、それはなかなか難しいし、実際問題として帰納の枠のなかでは無理ではないかと考えている。局所的な予測モデルを束ねてより大きい問題に対応すればよいのではないかという考え方もあるのだけど、それは結局、問題を小さくしておいてわかることの中だけで理解するということなのであまり上手くいかない。さらに、新規性の高い化合物にジャンプする(いわゆるホッピング)というものはQSARのような帰納的な推論方法からでは成し遂げることは非常に難しい。(ファーマコフォア探索は前提条件決め打ちだからなぁ、、)

いろいろ考えるに、結局創薬においては、それぞれのプロジェクトで(尤もらしい)仮説を構築できる力というものが一番重要なのだろうと考えているのだけど、本書はそういった仮説構築の論理というものに対して、帰納や演繹との対比をしながら明確に述べているので、QSARの論理的な限界はどこら辺なのかとか、より良い仮説を出すためにはどういう思考サイクルをまわせばいいかとかのヒントが満載だ。

ProductName アブダクション―仮説と発見の論理
米盛 裕二
勁草書房 / ¥ 2,940 ()
在庫あり。

さて、本書では科学的方法には帰納法の他に仮説の提案が必要であり、仮説の提案なしには帰納法を正しく用いることは出来ないと述べていて、その通りだと思う。しかし一方で、仮説は検討中の問題の現象についてもっともらしい、もっとも理にかなった説明を与えるものでなくてはならないとあるように、確度の高い仮説を構築するためには、高い分析能力や論理力、数多くの解析方法やマイニング方法への知識があってはじめて仮説提案力が高まるのだろうなと思うのだ。

  • 探求の論理学は思惟の動力学、論証の論理学は思惟の静力学
  • 分析的推論は前提の中にすでに含まれていること以上のことを結論をして導きだすことはできない
  • 現実の人間の思考においては、諸概念の意味は類比やモデルやメタファーなどによって絶えず修正され拡張されている
  • アブダクションとは説明仮説を形成する方法
  • 演繹、帰納、アブダクション
  • 発見のタイプ
    • ということの発見
    • なぜかの発見
  • 科学的仮説や理論は、観察された事実から導かれるのではなく、観察された事実を説明するために発明されるものである
  • アブダクションは遡及推論
  • 未知について推論するという目的にとって演繹は役に立たない
  • 仮説は検討中の問題の現象についてもっともらしい、もっとも理にかなった説明を与えるものでなくてはならない
  • 創造的想像力による推測の飛躍
  • アブダクションは理論を求める、帰納は事実を追及する
  • 単純帰納と質的帰納
  • 科学的方法には帰納法の他に仮説の提案が必要であり、仮説の提案なしには帰納法を正しく用いることは出来ない

「ひらめきの設計図」を読んだ

ホンダの三代目社長の考える「ひらめき」とは。

ProductName 「ひらめき」の設計図
久米 是志
小学館 / ¥ 1,785 ()
通常3~5週間以内に発送

最初の方と、最後の創造と仏教との関連付けあたりが面白かったが、多少くどく感じた。多少読みやすくして、ビジネス本みたいにすれば良いのかも。

  • 創造とは誰も知らないところへ自力でたどり着く行為
  • ゲッツェルスの創造プロセス
    • 最初の洞察
    • 浸透
    • 発酵
    • 啓示
    • 検証
  • 創造にあたってはことを始める前にきちんとしたステップを踏んで「よくよく考える」
  • 勝兵はまず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵はまず戦い而る後に勝ちを求む
  • 相似象を追求することで原因解明の鍵を探す
  • 客体的反省と主体的反省
  • 六波羅蜜と創造体験
    • 布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧
  • 言語世界の思考から抜け出して対象の有様を言語思考を通さずに直接心が受け止める境地
  • 因 縁 果

「フリー」を読んだ

正月の暇な時間を使って一気に読んだ。この内容が1.9Kで読めることが単純に素晴らしい。

ProductName フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン
日本放送出版協会 / ¥ 1,890 ()
在庫あり。

一方で、〈無料〉からお金を生みだす新戦略というのがちょっとレトロスペクティブに思われた。Joe's Laboなんかと合わせて考えると面白いかもしれんが。まぁ、今いる業界ってどうかなぁと思うことは多々あるので。

  • セーの法則
    • 供給はそれに等しい需要をつくる
  • ダンバー数
  • 競争市場においては、価格は限界費用まで下落する
  • 誘発された陳腐化

「イノベーション・マネジメント入門」を読んだ

最初の方の章は面白かった。アブダクションをもうちょい追いかける

  • イノベーションは知識を生み、知識を活用する営み
  • イノベーションとして成立するかどうか、その成否を判断するのは市場
    • 往々にして新たなイノベーションを決定的にするのは、下手な技術志向よりも商品化あるいは事業化できるセンスであるというのは、今も昔も変わらない
  • イノベーションの誘因:テクノロジープッシュ対マーケットプル
  • イノベーションの普及は、決して技術的要素だけで決まるのではなくて、それを受け入れる人間の認知や信念、その背景にある文化や社会的なシステムが決め手になるという点だ。
  • イノベーションには技術の面で二つの次元がある
    • 個々の部品に関するイノベーション
    • それらの部品のつなぎ方やまとめ方に関するイノベーション
  • 模倣されない資質
    • 真似するのにコストや時間がかかる
    • 資源の性質上真似することが難しい
    • 競合企業が自らの事情で真似出来ない
  • 真似されない技術の保有
    • 真似されない性質の技術の開発をおこなう
    • 法的保護
    • 技術要素に他の情報的価値を組み入れる
    • ほかの経営資源と組み合わせる
  • 環境のダイナミクスな変化に対応しながら、外部とのやり取りを通じて新しい技術的知識を学習していくように方向づける戦略
  • コンカレント・エンジニアリング
  • NIH(Not Invented Here)シンドローム
  • 技術革新の芽は「技術そのものへの没頭から生まれ、芸術的手腕や職人的熟練の感覚、物事をうまく調和させる感覚が、その没頭と結びつくことによって生ずる」
  • アブダクション
  • 創造のプロセス
    • アブダクションによる仮説の形成
    • 演繹的推論による仮説の一般化
    • 帰納的推論による仮説の検証

今年一年を振り返る

過去に辿りながら自分のエントリーにスターを付けつつ、一年を振り返る。

生き方のこと

「半農半Xという生き方 実践編」を読んだ

後世に贈り物を残して逝こう

ProductName 半農半Xという生き方 実践編
塩見 直紀
ソニーマガジンズ / ¥ 1,470 ()


音はいわゆる暗黙知の一つだと思ふ。娘と息子には僕の音コレクションから何かを感じ取ってもらえればありがたいなぁと思っている。

「仕事と幸福、そして人生について」を読んだ

ポスト工業化社会においては、ある特定の職業という概念も、すぐに貯蔵が尽きてしまう在庫でしかない

ProductName 仕事と幸福、そして人生について
ジョシュア・ハルバースタム
ディスカヴァー・トゥエンティワン / ¥ 1,680 ()
在庫あり。

お仕事のこと

今年は4つ発表した。「創薬研究における量子化学」「ケミストリー的人工無脳」「ソーシャルブックマークとブログを融合したような文献管理システム」「特許収載の化学構造を如何にデータ化するかとそれをどう使うのか的内容」

3つ目以外すべてレスポンスが良かったので満足。三つ目はちょっと場違いだったかな。まぁ、美味しいものたくさん食べられたからイイけど。

オープンソースで始めるゲノム・プロテオーム・メタボローム解析

こういう本がもっと出てこないとだめだよね。特にケモインフォマティクス

DMPKに力を入れた

ProductName ファーマコキネティクス―演習による理解
杉山 雄一,山下 伸二,加藤 基浩
南山堂 / ¥ 6,300 ()
在庫あり。

これも読んだ

ProductName Drug-like Properties: Concepts, Structure Design and Methods: from ADME to Toxicity Optimization
Edward Kerns,Li Di
Academic Press / ¥ 8,922 ()
在庫あり。

MCMCも触りだけ

ProductName マルコフ連鎖モンテカルロ法 (統計ライブラリー)
豊田 秀樹
朝倉書店 / ¥ 4,410 ()
在庫あり。

programming

OS自作入門

ProductName 30日でできる! OS自作入門
川合 秀実
毎日コミュニケーションズ / ¥ 3,990 ()
在庫あり。

Unix/Linuxプログラミング理論と実践は面白かった

ProductName Unix/Linuxプログラミング理論と実践
Bruce Molay
アスキー・メディアワークス / ¥ 6,090 ()
在庫あり。

プログラミングHaskellとReal World Haskellは良書。RWHは継続中。

ProductName プログラミングHaskell
Graham Hutton
オーム社 / ¥ 2,940 ()
在庫あり。

ProductName Real World Haskell―実戦で学ぶ関数型言語プログラミング
Bryan O'Sullivan,John Goerzen,Don Stewart
オライリージャパン / ¥ 3,990 ()
在庫あり。

家庭菜園借りた

これは結構面白かった。

そば屋はなぜ領収書を出したがらないのか?

タイトルは微妙だが、領収書に関するアレコレ。

  • 資本取引
  • 会社の経費の領収書を社員がもらうときには「会社の宛名にしなきゃダメ」というのは社内規定であって、税務申告上にはそんなものはない
  • 修繕費は原則経費だが、修繕することによりその価値が高まる場合には固定資産として計上する

「週末起業サバイバル」を読んだ

アイデアは考えるなと同時に注文してた。

ProductName 週末起業サバイバル (ちくま新書 811)
藤井 孝一
筑摩書房 / ¥ 735 ()
在庫あり。

基本的にはビジネスってのは自分の手を離れるような仕組みにすることみたいな金持ち父さん的な話だった。ただ、それを会社に属しながら如何にやるか?という場合に、どういうあたりに気を使わなければならないかという内容。

リスクを最小限に抑えながら起業にそなえるには、税金とか就業規則みたいな法律関係にも注意する必要がある。

表紙の

「自分は起業にむいているかどうか」など、考える必要はありません。選択肢を選ぶ権利は、もはや雇用者側にはないからです。何も考えずに、いざというときに備えて、、、

ってあたりにピンと来るものがあれば、読むと面白いかもしれません。

「アイデアは考えるな」を読んだ

昨晩から嫌な予感はしていたのだが、朝起きたら喉がザラザラで熱っぽい(+今月まだ有給とってないわ)ってことで、休んだ。

午前中寝てたら、佐川のヒトが本持ってきてくれたので読んだ。

ProductName アイデアは考えるな。
柳澤 大輔
日経BP社 / ¥ 1,365 ()
在庫あり。

ライフハック系の本というよりは働き方のメッセージ色が強いかな。 アイデア出しの本が読みたいんだったら、本書の参考のとこにあげられている本を何冊が読めばいいんではないかな。

「おわりに」に

断言します。これからはカヤックのように、面白く働くことにこだわる会社や個人が増えてきます

ってのがまずあって、そういう結論をイメージしながら本を組み立てたのかなと思った。

会社があってそこにヒトが集まるんじゃなくて、ヒトが集まって面白いことをやるから結果法人格としての会社という体裁になんだろうなぁと。

  • コミュニケーションは先に取ったほうが勝ち
  • アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
  • 発送法
    • 結果逆算法
    • 曼荼羅チャート
    • アイデアの公式
  • 仕事と遊びを区別してはいけない

ボキボキです

会社の自己啓発?支援制度みたいなのがあって簿記の試験に合格するとお小遣いとして数万円もらえるらしい。

テキスト代は自腹なので安いヤツを買って3級をとる。受かったら来年の6月に2級を目指す。

ユーザー会終了

参加された皆様おつかれさまでした。今後ともよろしくお願いします。

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  • 今回沢山名刺交換できてよかった
    • フォローしているヒト何人かに会えた
    • Ruby/java/C#使いのヒトがいた。
    • IBISでディスカッションしてた方と改めて話せた(僕もIBISでも発表してみたいんだけどなかなかネタがない)
  • ディスカッションも沢山させていただいて楽しかった

異業種のヒトの発表は色々参考になる。Zチャート知らんかった。僕らは化合物や薬理活性データを製造していると考えれば、そういったものをZチャートで表現するのも面白いだろう。今度やる。

Treemapはvisualizing dataに実装載ってた。

ProductName ビジュアライジング・データ ―Processingによる情報視覚化手法
Ben Fry
オライリージャパン / ¥ 3,780 ()
在庫あり。