創薬系における知識管理というもの

創薬系ももっときちんとログをとって定期的に振り返る、それを細かいサイクルでおこなったほうがいいんじゃなかろうかという意味合いも込めてSAR Newsに寄稿したのが去年のことだけど、もっと知識管理全体をどうするのがいいだろうかと、ここ数ヶ月考えていたので、お盆休みを利用して少しまとめてみる。(なぜ数カ月考えていたかというと、4月にITサポートの部署に異動になったという大人な事情ですねw)

今回移った部署が管理しているインフラ自体は僕らが昔作ったものだが(ITっていう名前がついててもシステム開発できたり、まともなプログラミングができるわけではない。)異動後何回か面談してみても、現在の上司に最近の手法であるアジャイルを創薬システムに応用してみようとか、PDCA(創薬だとDesign-Make-Test-Analysisかな)とかそういう話をしても理解出来なかったし、だからといっていまさら勉強する気もないだろうからなぁ。

とはいえ誰かがそろそろ前進させないとまずいと思うので、異動した記念にでも夏の終わりにでも(2,3個役職飛ばして)振るだけ振ってみる予定なんだけど、他のヒトの役にも立つかもしれないのでエントリとしてまとめておきます。

Data, Information and Knowledge

Data, Information and Knowledgeに従って考えていくと都合がいい。というのは割とスパッと切り分けがしやすいから。図ではwisdomが頂上に君臨しているのだけど、よく見るのはData,Information,Knowledgeの三層構造なので、そっちで考えていく。

Data

まぁ、どこの会社もデータのインテグレーションはやるでしょう。とくに実験データのトレーサビリティをどうするかは問題になると思いますができるだけロボットデータにタイムスタンプを付与するくらいはやっといたほうがいいですね。あと実験者に電卓を叩かせないでIC50とかそういう値まで自動的に計算するようにしたほうがよいですね。(実験者は意外にタイポが多い)でもこういった話は今回はどうでもいいので略します。データのインテグレーションは適切に行われているという前提なので最下段のピラミッドはクリアーですな。

Information

データがインテグレーションされたら、次にやるのは分析ですね。分析は別にRでもなんでもいいけど、情報管理という意味では分析のスナップショットが取れる奴がよいですね。 Spotfireとか使うと分析の共有化(情報の共有化)ができます。

Information can be considered as an aggregation of data (processed data) which makes decision making easier.

Data, Information and Knowledge

なぜ情報が必要かというと、それは意思決定がしたいからです。確かにInformationの層をきちんとすれば意思決定は効率的に行えるでしょう。

ところで、意思決定とはなんであろうか?なぜ我々は意思決定をしたいのだろうか?

意思決定をするために必要なものは情報とあと何であろうか?を考えてみます。

合成した化合物が活性あったよバンザーイ(さくせん:ガンガンいこうぜ)とか、頑張って難しい合成こなしてみたけど活性なかったよショボーン(さくせん:いのちをだいじに)

これは意思決定をしているわけではないですね。

ある仮説を立ててそれが正しかった正しくなかったか、正しい場合より角度の高い仮説はどうなのか、仮説が正しくなかった場合どこに問題があって、それを証明するにはどうしたら良いか、つぎはどういう方向で攻めるべきか

そういう継続的な改善作業をコントロールする仕組みが必要なんだと思います。でも、これはInformationの層では管理できないので、Knowledgeの層になにか、(とても大切な何か)が必要なんでしょう。

Knowledge

Knowledge is usually based on learning, thinking, and proper understanding of the problem area.

It can be considered as the integration of human perceptive processes that helps them to draw meaningful conclusions.

Data, Information and Knowledge

知識も簡単に検索できてすぐに理解できるような必要があるが、慣習的に報告書の打ち出しやPPTの資料が必須のとこも多いと思うんだけど、探索コストのかかるフォーマットはどうなのかなぁと思うが。誰の得になるんだろうか?wikiでイイじゃんとも思うが。自分は実験報告書をwikiで管理してて、職場のwordのフォーマットでいつでもexportできるようにしてるので、便利だし昔やった仕事もパパッと探せて快適ですね。

知識管理システム

Rocheのやつは経験の共有化に重点をおいてるっぽいような気がする。であれば、構造のハンドリングできるようにしたwikiにタグつけたり、検索エンジンを強力にすればいいような気がする。文章自体構造化してあるんだから、みんな大好きPPTとかWORDでもPDFでも出力は気にならないでしょう。あとはバージョン管理システムのいいやつ入れておけば良いんじゃないかなぁ。でもやっぱ文化醸成の努力が素晴らしかったんだろう。

GSKのほうはHDD(仮説駆動型ドラッグデザイン)を推進するようなものだったと思う。合成案を相互レビューできるようにしてあったかな。合成のヒトは合成案を否定すると人格否定と捉えるヒトが結構いるから、こういう仕組みっていいよなぁと思った記憶がある。

こういったタイプの経験管理というのは、ノウハウを共有化して、プロジェクトを効率化するとともに、個人に張り付いた知識を引き剥がし、職場全体の財産にすることができるのでよいのだが、あまりインスパイアされないのでやっててあまり楽しくはない。

問題管理システム

ソフィーの世界の作者が別の著作で良い事書いてたので、よく引用してます。知識ベースっていうのはまさに前者ですね。

An answer is always the stretch of road that's behind you. Only a question can point the way forward.

Hello? / Jostein Gaarder

stackoverflowっていうプログラマのためのQAサイトが良くできていて、クローンが幾つか作られています(OSQA,shapado)

うちではshapado入れてみて半年くらいたつのだけど、ユーザーはまだまだ少ないが質問も70を超えてきて結構楽しい。良い質問にインスパイアされると、より楽しいアイデアが浮かんだりするし、複数のプロジェクトで同じような問題抱えてると、部署で何とかすべき課題なんじゃないの?なんてわかったりするし。

結局、知識管理をも内包したプロジェクトを前進するための全てをきちんと管理し、知識が属人的になりすぎないようにしつつ、柔軟にリソースをコントロールするための全体的な仕組みを考えていきたいが、そのためにはプロトタイプを幾つか作ってみて反応を見ながら進めないといけないなぁと。

論文管理

読書情報は属人的なものであるが、どういう論文を読んだか、それでどうインスパイアされたか、(自分の持っている情報と照らし合わせて)どこを否定したかといったblogっぽいブックマークサービスがあると便利です。ポイントは目録じゃなくて、それを読んでどう考えたかを記す部分です。ちょっと前に新しいのをつくろうとしつつ開発が止まっているが、なかなかモチベーションを保つのが辛い。

自分でつくってみて、音楽は曲のつなぎかた自体に意味がある(DJing楽しい)から曲名リストは意味があるけど、論文目録眺めても大して面白くない。リファレンスをたどっていきつつサマライズするようなサービスは面白いかもしれないが。

どういうツナガリに意味を持たすかだなーと思う。

技術

Express+ChemDoodleというjavascriptライブラリ同士の組み合わせなんかもコンセプト的にも技術的にも面白そうな気がするが。あとHTML5とタブレットで色々変わりそうな気もしている。

参考書籍

こういったアプローチはソフトウェア開発業界の方が断然進んでいるので、そういった本を幾つか。できるだけ概念を説明しているようなのを選んでみました。

Redmineによるタスクマネジメント実践技法

ProductName Redmineによるタスクマネジメント実践技法
小川 明彦
翔泳社 / 3444円 ( 2010-10-13 )


継続的インテグレーション入門 開発プロセスを自動化する47の作法

ProductName 継続的インテグレーション入門 開発プロセスを自動化する47の作法
ポール・M・デュバル
日経BP社 / 3360円 ( 2009-08-06 )


入門Git

ProductName 入門Git
濱野 純(Junio C Hamano)
秀和システム / 2310円 ( 2009-09-19 )


アブダクション

ProductName アブダクション―仮説と発見の論理
米盛 裕二
勁草書房 / 2940円 ( 2007-09-20 )


意思決定の罠

意思決定は技術ですね。この本は結構面白かったので創薬の場合で考えてみた。

ProductName まさか!?―自信がある人ほど陥る意思決定8つの罠
マイケル・J・モーブッサン
ダイヤモンド社 / 1890円 ( 2010-04-09 )


意思決定には、おかしなパラドックスがある。誰でも意思決定の重要性については理解しているが、それでも意思決定のトレーニングをする人は極めて少ない。

本書は特に意思決定の際にはまりがちな落とし穴を8つ紹介している

思考モデルとはなんなのか?

モデラーの間にはよく知られた格言がありますね、正しいモデルなんて存在しない、十分に表現できるモデルが得られただけだみたいな(正確なのは忘れた)。

思考モデルとは、外の世界の現実を自分の内側に描写したものである。細部よりもその情報が素早く自分に到達することを重視した、不完全な描写と言ってもいいだろう。

例えば芳香環を共鳴による電荷移動だけしか知らなくて電子雲のイメージを持てないとかそんな感じ。モデルの限界わかってないと、ハマることは多い。

帰納法的に考えてしまう問題は、要は限られた情報をもとに未来を予測してしまうことだ。

これはQSAR,QSPRの抱える本質的な問題ですね。構造XX相関は、知っていることの範囲でしか答えることができないし、どこまでいっても相関であって因果関係とは異なる。

ストレス反応があると短期的に特になることを追求できるが、長期的に何がいいのかを考えられないのだ。これが、トンネルビジョンになる原因の一つだ

プロジェクトでミクロな視点しかできないのは本人の資質かなと思っていたけど、環境要因も後押ししてるのかもしれない。短期成果は見えやすいのでプロジェクトリーダーにあがりやすいんだけど、こういう人がなるとプロジェクトが迷走しやすい(経験的に)

専門家の意見を鵜呑みにしない

物事を予測する際に、人間がアルゴリズムを上回る結果を出すような分野を見つけるのは不可能

直感がうまく機能するのは安定した環境下なので、複雑な状態では重要性としては低い

  • 専門家は、その分野のパターンを認識している
  • 専門家は、初心者よりも素早く問題を解決する
  • 専門家は、初心者よりも奥深くまで問題を掘り下げて考えることができる
  • 専門家が提示する問題解決方法は、初心者のそれよりクオリティが高い

正解は時と場合による

理論構築をする過程では、仮説が実データと合っているかを研究社が検証し、その中で出てくる例外(アノマリー)を見つけ、さらに理論を研ぎ澄ましていくのだ

深く考えて本質を捉えるということですね。特にその際に相関関係と因果関係は違うということをきちんと理解することが重要。

lead optimizationするときには大抵logPとかPSAの相関からそういったパラメータの上げ下げで問題を解決するストーリーにしたがるけど、それってメカニズム的に説明がつくの?っていうことを常に問いかける癖をつけておくとよいですね。

突然大規模な変化に見舞われることもある

所謂ブラック・スワンですね。

ProductName ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社 / 1890円 ( 2009-06-19 )


ProductName ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質
ナシーム・ニコラス・タレブ
ダイヤモンド社 / 1890円 ( 2009-06-19 )


ハロー効果に注意する

平均回帰性から、運により大きな成果をあげた人は次も同じくらい大きな成果をあげるとは限らない。結果よりもプロセスを重視するということは、そういった運の要素を見極めながら実力を評価するということなのでしょう。

まぁ、でも企業は結果を評価してプロセスなんて後付ですよね。頑張ったから結果がついてきたという言葉に現れているような気がする。

これからはアジアの中の国のひとつとして日本というものを考えるんだろうな

一ヶ月くらい前に業界の集まりがあったので、割と仲良くして頂いている他社のメディシナルケミストの人にこんな論調の話を振ってみた。

帰ってきた答えは「ケミストはまぁ他の業種でもつぶしが利くから製薬業界にこだわらないでも日本に就職先はあると思うよ」ということだった。でも、これがしめしていることは、合成っていう作業は、誰でもやれる系のコモディティ化するタイプの仕事のひとつってことじゃないかなぁと思った。まぁ、実際替えがきくしね。

さらに昨日、外資系のソフトウェアベンダーさんが量子化学計算ソフトウェアの売り込みに来てたんだけど、「海外のメガ・ファーマのニーズを汲みとって製品設計してますけど、日本のユーザーさんはまだあまりいないので、今入れて頂ければ日本でトップのほうになれると思います」っていう営業トークだもんなぁ。多分国内企業の性格を汲んだトークなんだろうけど、、、

流行を追いかける人には流行をつくりだすことはできないって言葉を思い出した。

自分のいる業界の未来を考えるに、メガ・ファーマのアジアの拠点が日本にないってことは、やはりこの国のこの業界はクォリティ/コストに競争力がないってことだと思うんだよなぁ。日本にこだわる必要あんのかなぁ、伸びそうな国に移って頑張るっていう選択肢を取る人はいないのかなぁ。まぁ、10年20年すれば答えが出るので気長にまとう。

日本人は自分は出ていかずに、お金を先に出稼ぎに行かせる人が多いようです。しかし、お金より先に人が働きに出ていく時代が来たのです。

ProductName アジアの時代を予言して20年
邱永漢
グラフ社 / 1365円 ( 2010-11-26 )


本書はそんな日本の状況をわりと外側から客観的に見たコラムですな。英語が出来たらアメリカとかヨーロッパを目指す記事が割と目に付く機会が多い気がするけどアジアのどこかを目指すっていう方向性もあるんだよなぁと思った。

ウッフィーという資本

ツイッターあまり関係ないし原著の題名THE WHUFFIE FACTORだし、日本語タイトルに騙されてた。新しい経済はどう回るか、どう回すかを考えさせられる本ですな。

貨幣資本から知識資本、そしてその先にはウッフィー資本が待っているのかなぁと漠然と感じる。

いま私たちは2つの並行する経済を生きている。そして俗に言う「資本」つまり「マーケットキャピタル」は、ソーシャルキャピタルがたくさんあるところで生まれるようになってきているのだ

わかったブログで見かけて以来、読まなきゃ思って積んでいたのだけどやっと読み終えた。

ProductName ツイッターノミクス TwitterNomics
タラ・ハント 津田 大介(解説)
文藝春秋 / 1650円 ( 2010-03-11 )


  • ウッフィーつまり信頼や評判を勝ちうるには、コミュニティとの関わり方で量より質が大事
  • 金銭的報酬はやり方が難しい

ウッフィー資本自体はそれほど目新しいものではないと思うけど、それが重要視されるファクターになってきたというか、セルフブランディングの重要性が増しているということかなぁと思う。

というわけで、LinkedInの日本語版は結構楽しみだったりする。

参考書籍

ProductName モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク
講談社 / 1890円 ( 2010-07-07 )


ProductName ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる
P・F・ドラッカー
ダイヤモンド社 / 2310円 ( 2002-05-24 )


起業成功マニュアル

ポジショニングの要諦

  • なぜ創業者はその組織を立ち上げたのか
  • なぜ顧客はその組織をひいきにすべきなのか
  • なぜすぐれた人材はそこで働くべきなのか

人材探し

  • その人はあなたが必要とすることをできるか
  • その人はあなたが考える事業の意義に賛同しているか?
  • その人はあなたが必要とする強みがあるか?

ProductName 完全網羅 起業成功マニュアル
ガイ・カワサキ
海と月社 / 1890円 ( 2009-05-29 )


  • 組織が成功するのは事業計画が優れているからではない。実行力にたけているからだ
  • 外部の資金を1ドルでも入れたら、その瞬間にあなたは「支配権」を失う

ザ・クリスタルボール

SCMのはなし。なかなか面白かった

ProductName ザ・クリスタルボール
エリヤフ・ゴールドラット
ダイヤモンド社 / 1680円 ( 2009-11-13 )


ニューノーマル

ニューノーマルを化学反応のコンテクストで考えれば遷移状態を経て、より安定な生成物に移行することかなと。まぁそもそも反応系には戻らんだろうと思うので、環境の変化に即した形で生活様式が変わるのはまぁ普通かなと。

変化が激しいってことがこういう認識になるのかな。

あと、これはそうだと思うなぁ。強く感じる

ニューノーマルでは、企業に雇われることと自営の境目は急速に消えつつある

オールドノーマルでは、「タコつぼ」で身をかがめていれば、温情主義の上司があなたを引っ張り上げ、現在の仕事を一生のキャリアへと転換する軌道に乗せてもらえた。

後半は投資色が強くなっていたので斜め読みしただけ。前半が面白い。

ProductName ニューノーマル―リスク社会の勝者の法則
ロジャー マクナミー
東洋経済新報社 / 1995円 ( 2008-09 )


  • 最も重要なメディア製作者は自分自身である
  • メディアはいたるところにある
  • 北京語の重要性が今後高まる
  • グローバル化は海に生きるメリットを魚に議論させるようなもの
  • 大企業が雇用を保証していない現在、起業は選択可能な代案

企業が分析力を駆使するようになるためには五段階の成長過程が考えられる

分析を活用すれば質の高い決定とよりよいパフォーマンスにつながる。本書では組織が分析をうまく活用できるための重要な5要素を、その頭文字をとってDELTAと表現している。DELTAとはつまり

  • D: データ
  • E: エンタープライズ
  • L: リーダーシップ
  • T: ターゲット
  • A: アナリスト

である。さらにそれぞれの要素について5段階の成長ロードマップを提示している。

  1. 分析力に劣る。データ、スキル、経営陣の関与など分析の必須条件が一つ以上欠けている
  2. 限定的。統一が取れていない、戦略ターゲットが絞り込まれていない
  3. 組織的な強化に取り組む。プロジェクトは発足するがDELTAのいずれかの要素で躓く
  4. 分析力を備えている。それなりの成果をあげるが、競争優位には至っていない
  5. 分析力を武器にする企業になっている

自分が創薬研究所での経験によれば、頑張った結果ステージ3くらいまでしかいかなかったので、ボトムアップ的なアプローチだとここらへんが限界かなと。統一が取られるような組織になるにはさらなる経営陣の積極的な関与が必須だと思うし、情報システム部とは別のスキルセットを持った分析系のチームがいないと難しいと思う。結局突き抜けるためにはDELTAのLが最も重要なんじゃないかなと思う。

個人的には、データをいつでも分析できる状態にしておくことは極めて重要であると考えていたので、研究所全体でそういった環境を維持することに関わってきたと。で、そういう環境になってログ分析してみると、分析する人はまぁ2割もいないですね。思うに分析に関する教育が足りないんだろうなぁと思っている。(実際に信頼性区間を観測値のmin-maxだって強固に主張していた薬理系のマネジメントもいたし、どんだけ異界やねんとげんなりさせられたこともありました。)

という理由で、DELTAにAが入っていることが非常に納得で、特に日本の企業はアナリストというジョブをもっと優遇して最大限活用しないといけないんじゃないかなぁと思ったりする。大体製薬企業で分析者の求人とかないからね。

というわけで、LとAさえあればData,Enterprize,Targetはなんとかなるんじゃないかなぁというのが私の意見。

すっきりとまとまっていて分かりやすい内容の本だった。どっちかというと組織戦略をどうするかっていう内容で、現場に分析力をどうやって持たすかな?という内容ではないけど、全体を見渡すには中々良いですね。

ProductName 分析力を駆使する企業 発展の五段階
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社 / 2310円 ( 2011-05-26 )


  • 他社が持っていないようなデータを収集し活用するにはどうしたらいいか
  • マスターデータ・マネジメント(MDM)
  • データをいつでも分析できる状態にしておくことは極めて重要である
  • IT部門の役割とは
  • 意思決定とはデータと分析に基づいて下すものだ
  • 現在の動向をまねしても遅れをとらないだけなので差異化を図る機会を発見しないといけない
  • 計測できるものは何でも計測する
  • 分析に精通し、かつビジネス感覚にも長けた人材を採用し、定着する条件を整える
  • 分析の究極の目的はよい意思決定である

チェックリストの重要性

書評サイトに「一気に読み終えた」とか書いてあって、「ビジネス本なのに一気に読み終えるとかどういうこと?」とか思ったのだが、How Toな内容でなくて、体験談みたいな内容だったので確かに一気に読み終えた。

逆に言うとHow Toじゃないので、自分の仕事に活かすにはよくよく考えないとダメですな。

チェックリストというものはルーチンワークを確実にこなすための手段だと思っていたのだが、コミュニケーション活性化の手段として使えるという話にはちょっと感動した。

建設業界では現場に確実にコミュニケーションを取らせるためのチェックリストを導入することで予想外の困難にも確実に対処するようにしているらしい。

現状把握とコミュニケーションの円熟化こそが、ここ数十年の建築の最大の進歩だ

つまり、作業とコミュニケーションの両方をチェックすることで複雑性に対応していくわけですな。

新しい働き方

煽り度高めだけど、割と遠くない未来から振り返ってみると本書の内容は正しいんだろうなぁと思える。オープンイノベーションだって突き詰めていけば技術をもったベンチャーではなく、独自の才能をもった個人に行き着くわけで。均質な労働力を抱えるというビジネスモデルにロックされた今の企業は崩壊していくんだろうなぁと思うわけです(自分のいる業界も含めて)。

ProductName 「新しい働き方」ができる人の時代
セス・ゴーディン
三笠書房 / 1470円 ( 2011-07-01 )


マルクスによれば無産階級(労働者)と有産階級(資本家)に分けられるのだけど、最近は無産階級の人も生産手段を持つようになった(知識資本)わけで、最近だと信用それ自体が資本(ウッフィー)だという考え方もあるようですな。

結局、資本とは何か(今後は何になるのか?)ということを考えながらその資本を効率よく増やすということを考えないといけないよなぁと思ったのであった。

  • 今は固定費を抱えた組織に頼むよりも、柔軟に動ける個人とつながれるほうがよほどスピーディに仕事が動く
  • 近年、仕事のあり方は「小さな貢献」と「細分化」という考え方で変わってきた
  • 学校は「教えるべきことを教える」だけ
  • 現在、大きな価値を持っているのは、知識に基づいて優れた判断が出来る人
  • 平凡な人ができるような仕事に興味を持たない
  • 情熱を持っている人が対象を見出す
  • 必死に働いたかどうかではなく、どんな価値を生み出して、どれだけ人に伝えられたか
  • 創作物は、形になって人に届いた時点で価値が生じる
  • 人の3つの状態「わからない、行動、完了」
  • 実行はさらなる実行につながる
  • 上に立つ人間がチームワークという言葉を口にするときには、要するに「いわれたとおりにやれ!」といっているのと同じ
  • 想像性を発揮しよう

おまけ