Mishima.syk #19やりました。次回の#20は10周年です。

まずは参加者の皆様、発表者の皆様お疲れさまでした。3年ぶりくらいのオフライン開催で久しぶりにみなさんと楽しくやれてよかったです。

たくさん情報交換できたのですが、タンパク質の一時配列もBERTやることに意味がありそうということが知れてよかったです。ただSMILESにBERTはあまり筋が良くないのではとも改めて感じました。

online開催のときにはdiscordを使っていたので、情報が閉じちゃっていましたが、今回はまたTwitterのハッシュタグで追えるようになっています。

日曜日(今日ね)はちょっとやらなきゃいけない仕事があったので終電には帰ろうとちょっと早く抜けたのだけど、週末は終電一本早いのを知らず。タクシーも来ない駅で途方に暮れた結果、結局1時間弱歩いて帰宅することになりましたとさ。

さて、次回のMishima.sykは10月に開催する予定です。そして10年目を迎えることになります。みなさんもとっておきのネタを持参して参加してもらえると嬉しいです。

MIshima.syk #19開催します(2023.2.18)

久々にオフライン開催です。1月中旬から下旬で調整していましたが、会場が押さえられずにこのタイミングになりました。

というわけで、時間は十分にあるので、皆さんのとっておきのネタを持ち寄って楽しくやりましょう。今回オフラインなのでディープな話題もOKです。そしてこれを機に沼津に遊びに来るのもアリです。

Discovery and Structural Characterization of Small Molecule Binders of the Human CTLH E3 Ligase Subunit GID4

Discovery and Structural Characterization of Small Molecule Binders of the Human CTLH E3 Ligase Subunit GID4

GID4に強く結合する化合物を探索するためにフラグメントスクリーニングしたりDELを使ったりするというストーリー

そもそもGID4は結晶構造が取られている上に基質認識のために深いポケットが有ることがわかっているというかFDVSWFMGというデグロンというペプチドを認識することがわかっているので、フラグメントスクリーニングの確度がちょっとあがっているから良い戦略だなと思いました。

ただフラグメントスクリーニングで得られた化合物の結合能はサブuMとそれほど高くなかった。

それとは別にDELを使ったスクリーニングをしているのだが、非天然アミノ酸trimerって感じの戦略なのでうまくペプチドミミックを選んでいるなぁと思いました。まぁそれはみなさんがDELをイメージしているかは別としてGID4の認識能をうまく利用したスクリーニング戦略だなぁと思いました。

さて、E3リガーゼはミスフォールディングを認識すると言われますが、ミスフォールディングって何かなぁと考えると「正しくないフォールディング」ってなるわけで、それって何?っていうのがSBDDとか構造生物関連の人には定義ちゃんとしろよーとか思われると思うのです。

私の解釈だと、「本来蛋白質の3次元構造のパッキングに寄与する疎水性残基が蛋白表面に露出してしまっている」とか「ペプチドの主鎖がうっかりみえてしまっている」とかそういうのがミスフォールディングとして認識されるのかなぁと思っているのでDELで非天然のアミノ酸様トリマーを合成するのはわかるんだけどそれはペプチドなぞってないか?とズルいというか言葉遊びをしているのではないかという気はちょっとします。

それだったらペプチドスクリーニングから論理的に設計して低分子の転換を目指すのが王道っていうか正しいサイエンスなんじゃないかなーと思ってます。ペプチドの相互作用から低分子化目指してスボレキサントまでたどり着くようなイメージですが、、、

テキストから化合物構造生成

面白そうだなと思ったので、早速読んでみました。

Stable Diffusionみたいなノリで使われることになるのかなぁと思いつつも、それだったらメディシナルケミストのサポートくらいにしか使えんよなぁと思ったり。

空気の読めるREINVENTみたいな感じで使えるとちょっと嬉しいけど、あったら嬉しいけどなくても困らん程度のものになりそう。

このあたりまとめている人がいたらちょっと情報交換したいですね。

The Beginning of FMO Era

Evotecから出たこの論文なかなか面白かったですね。"なかなか"というのは我々随分前にこのあたりは通過済みですので。自分たちは取り扱わない蛋白質の事例が多かったので、私にとっては新しく面白い相互作用をいくつも知ることができて満足です。

本論文ではPPIでやっていましたが、ペプチド(環状ペプチド)でも同じことができます。というより我々はそっちを精力的にやっていました。ペプチドは蛋白質と低分子の二重性を示すので面白いモダリティだなぁと思います(課題も多いですがw)このようなFMOの計算結果を用いて、Protein engineeringでより結合の高い蛋白質の設計をしたり、ペプチドの場合より結合能の高いペプチド設計をしたり、それをミミックするような別の分子サイズに置き換えていくのがスタンダードになっていくのだと思います(解釈もしやすいですしね)。

で、こういう仕事を当たり前にやっている状況になると、こんな感じの論文に対し、FMOで論理的に低分子にできるのか(むしろなんでやってないの)?みたいなreplyが脊髄反射でされるようになるわけです。

(鍵垢なので、IDは伏せます)

I wonder if the (inter/intra) FMO interaction patterns with the protein is similar with the peptide and the small ligand

あとはさっさと計算走らせて(大体のpdbファイルは数分でFMO計算走らせられる環境になってる)、暇なときに解析して知識を積み上げるだけのルーチンワークですし、私としてはこういう論文を見つけては、自分で計算したり、チームメンバーのトレーニングとして計算と解釈してもらったりしてますけどなかなか楽しいのでおすすめです。

FMO計算の先について

Evotecの論文だとFig. 4.のLIMK1とCofilin1におけるM115とY514の相互作用とか4kcal/molくらいあるし、Fig.6. のKRAS/SOS1のN879のやたら強い相互作用(hotspot)などは明確に見えてきて面白いのだが、IFIEだと相互作用の強さが定量的に出てくるだけだし、PIEDAは成分に分解するだけでDIが効いているのかESが効いているのかどういう成分が関与しているのかがわかるだけでありこのあたりが(いまのところの)FMOの限界ですよねぇと。

この情報をDrug Designに還元するためにはもう少し理解度をあげないといけなくて、どういう軌道の相互作用により強い相互作用が形成されているのかを理解した上で、化合物のこの場所にこういう置換基を導入して軌道の形を変えてやるべきというような論理性が求められてくるのだと思います。

レトロスペクティブな考察を加えるならこの論文も置換基効果で説明できるタイプのものじゃないかなぁと思います。今度計算してみてきれいな結果が出るようだったらブログネタにするかどっかにポスターでも出しに行こうかなぁと思っています。

実際ノンクラシカルな相互作用がFMOで確認されたら、関与しているフラグメントのHOMO/LUMOチェックしてフロンティア軌道論で説明できるかどうか評価するところまでは基本路線だからね。メドケムの人もリード化合物のHOMO/LUMOくらいは基本として抑えておくと最適化の質が上がるとおもんですけどあんまりやる人いませんよね。 そんなこんなでそういうのPythonでサクッとやりたいよねーといいながらpen先生と一緒に作ったのがpsikitだったりします。

今後のSBDDで重宝されるのは量子化学をきちんと理解してSBDDに活かせる人材かNMR等の実験系をきちんと理解した上でそういう情報とMDを組み合わせてプロジェクトに貢献できる人なんじゃないかなぁと思っています。

FMOについて

FMOは北浦先生により生み出された日本初の手法ですので、Evotecみたいな論文発表が日本からなされると嬉しいですね。FMODDというコンソーシアムもあるので頑張って欲しいです。

うちもなんか貢献を見せないといけませんなぁと思っていますので、近いうちになんか出すと思います。

あとは自分の関与している学会で「ディープすぎるFMO創薬の話」でも企画すればいいんですかねぇ(興味あります?)

Mishima.syk #18やりました

参加していただいた皆様どうもありがとうございました。

個人的には「Cell-type DeconvolutionとDiagonalデータ解析の解説」が大変おもしろかったです。解析もっと頑張りたい。

さて私の資料はこちら。 良い文献を効率よくシェアするのがよいチーム、組織を作るために必要なことだと思うのですが、皆さんあまりうまく行っていない感じですね。

新着文献チェック

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  • inoreader

文献管理

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  • Mendeley+PaperShip

文献情報共有

  • 最近、著者が連ツイで自分の論文解説するケース多いのでああいうの読むと手っ取り早い
  • 詳しい人に無理矢理メンションしちゃいます
  • TeamsにJournal club作ってますが流れるほどない
  • このあたりはもう少し良い仕組みがほしい

その他

  • 購読コンプラ問題は大学に籍だけもらうのが一番いい気がする
  • Zoteroへの登録はcommand+ shift + sでもできる

参考情報

Mishima.syk #18やります

前回から10ヶ月くらいぶりですが、Mishima.sykをやります。参加はこちらから

今回は流石にオフラインで集まりたいですねと話していたのですが、なかなか難しいですね。green lightが得られるのはいつになるのやら。

そんなわけで、最近のんだ緑のビールをカバーイメージに選んでみました。

今回トークは論文管理周りをぶっこんでみようかなぁと考えています。最近はZoteroで文献管理しているのですが、やっぱり読書感想文をシェアしないと、賢くなんないよなぁと感じているのでそのあたりの話をしてみようかなと。SOSOG開発してハッピーな人がいるかどうかも聞いてみたいし。

それから、話は変わるのですが、先週のCBI講演会に参加された皆様ありがとうございました。のっけからFMOのほうに話を捻じ曲げてしまってすいませんでしたと思いました。ただ、パネルディスカッションに参加してみて強く感じたことがあったので以下に書いておくので次回のMishima.sykでフィードバックもらえると嬉しいです。

そもそもFEPを含めた技術によって「(サイエンス的に)わかる」と「プロジェクトに貢献する」の間には隔たりがあって、他社の分子設計の人たちは前者の立ち位置によっている人たちが多いように感じました。一方で私達のチームは後者の意識が強いっぽく(メドケムと分子設計の境目があまりない人が多い)、結果として人材育成やプラットフォーム構築の考え方が大きく違っているように感じました。

それではMishima.sykをみなさんと楽しく議論できる場にできればと思います。

駄文寄せ集め

最近アレヤコレヤと忙しくて、なかなかゆっくり考える時間がないのですが、在宅勤務は最高ですな。こればなければ片道2時間の通勤時間の私はすでに詰んでいる。ただ、外に出なくなってしまい、修善寺に山葵の花を買いに行きそびれて旬が終わってしまった気がする。河津桜も満開だし。

来週くらいにはまん延防止も解除されてまたビールでも飲みに行きたい。

オープンイノベーションのこと

製薬企業のオープンイノベーション担当って難しいよなぁと思っています。イノベーティブな関係性はどうやって構築していくのがいいんでしょうかねぇ。特に、担当者の知識のないフィールド(AI創薬関連とか)のお話が降ってくるたびにしんどいのは各社共通のお悩みっぽいですね。良し悪しの判断が(他社が導入したか否か)なのは、老若問わず一定数存在していて、このあたりに決定権があるとあれなんだろうなぁと。

SBDDとかCADDのこと

今のSBDD/CADDチームはなかなか楽しく成果も出しているので、研究所の規模の割には人数が割かれている感じです。チームの強さだけを目指すのであればこのままでいいかなと思うんだけど、最近色々ありまして「社外からSBDD頑張ってるって言われる会社にするにはどうしたらいいんかな」ということを考え始めています。寄せられた期待感の一部はキックバックしますので、みんなで考えていきましょう。

そういえば来週のCBI講演会にパネリストとして登壇することになっています。皆様のキャリア形成の参考になれば良いなと考えています。

Modalityについて思うこと

Wikipediaによると

モダリティ (modality) または法性(ほうせい)、様相性(ようそうせい)[1]とは、話している内容に対する話し手の判断や感じ方を表す言語表現のことである。

自分でmodalityが使われている古い文献を追いかけたことがあって、そのときは20年くらい前のAZのJ..M.C(だと思う)に 抗がん剤のモダリティ というような感じで記述されていたのを発見して、「治療コンセプトを達成するための薬剤の多様性」なんだなぁと理解していてました。

しかし、昨今のモダリティの使われ方は、分子サイズとMoAのカテゴリという意味合いで使われていることが多い気がします。特に経営側、VC、オープン・イノベーション関連の部署は自社ショーケースのカテゴリをいかに増やして豪華に見せるかという側面での使われ方が多いように感じます。そのあたりは自社も他社も一緒で四半期決算報告書とかR&D報告書なんかを見ればわかると思います。

さて、もともとの言語表現に例えると、これは単語帳を作るようなものだよなぁと思っています。そもそも、良い文章を書いて相手に伝えるためにどういう単語を選択するべきかという話が、ある単語がマッチするようなセンテンスを考えましょうという問題に置き換わっているような気がしていて、それってどうなんだろうなぁと感じる今日このごろです。

The Pillars of Knowledge Management

IT infrastructure, knowledge capture, participation, and culture

インフラを作って、サービスとしてローンチするところまでは簡単だけど、ユーザーを定着して組織の機能の一部として溶け込ませるかには多大な労力を費やさないといけないのが難しいし、会社はそのエフォートを理解してサポートしてきちんと評価しないといけないのでさらに難易度が上がる。

メディシナルケミストの組織の文化をどう変えていったかという取り組みについて書かれた論文だけど、組織変革が必要だなぁと感じている人には役に立つような試行錯誤が綴られていると思います。