核酸医薬

よくまとまっていて大変面白く読めました。まぁ、自分は20年くらい前に入社してから半年くらいASOのオリゴマーをひたすら作らされて、「ASOって難しいなぁ」という感想しかありませんでしたが。

生物学的な発見としては面白いし、夢が広がりングなんだろうけど、工学(医薬品)としてコントロールしていくところにまだまだ課題があるんだなぁと改めて思いました。

読んでいて素朴に感じた疑問

  • 1.2 図4. オフターゲット効果を回避するためにシード領域の塩基結合力を弱めるとあるのだけど、それはオンターゲット効果も弱めるのではなかろうか?

アプタマーと、PDPSのような環状ペプチドのPros/Cons

  • ペプチドとアプタマーはどちらがフォールディングの自由度が高いのだろうか?
  • 核酸とアミノ酸の相互作用は限定的なのではないだろうか?(核酸側がメチル化したりしないとCh-πみたいな相互作用は獲得できないですよね?)
  • アプタマーはなにのalternativeになるのだろうか? 低分子それとも抗体?

というような疑問が浮かびましたが久々にサイエンティフィックな問題をゆっくり考えられて良い時間を過ごせました。

Looking Back on 2021 and New Year Resolution

ちょっと時間が経ってしまいましたがあけましておめでとうございます。

去年を振り返ってみると、マネジメントに忙殺されないと誓ったにも関わらずほぼマネジメントばかりでしたが、ちょっとおもしろそうなフィンガープリントの作り方を思いついたので、今年はそれを形にできればなぁと思っています。

また、コーチングを受ける側からコーチする側になったことで、色々と心境の変化があったように思います。特に年末年始は自分のマネジメントスタイルについて、ひとり大反省会をしていました。

私はジム・コリンズのビジョナリー・カンパニー2にある「誰にバスをのせるか」に強く影響をうけていて、バスの運転の仕方(チームの方向性を決める)とバスをどう形作るか(チームの仕事の範囲とか)に全振りしていて、あまり乗客が快適に過ごせているかどうかに気を配ることを怠っていたので今年はそのあたり丁寧に対応していきたいと思いました。

それから今年はCADD/SBDDのチームとバイオインフォのチームがシナジーを出せるような方向でいろいろと挑戦していければいいなぁと思っています。もう少しターゲットファインディングに力を入れたいなぁと考えているのと、低分子以外のモダリティでもなにかおもしろい仕事ができればなぁと思っています。

ところで、先週コーチングをしているときにあるステークホルダーの方から、「どうやってチームメンバーにチャレンジを促しているのですか?」と聞かれて思い浮かんだのがこの言葉でした。

十分に発達した仕事は遊びと区別できない

やっぱり、SOTAを理解して、最先端の部分でワチャワチャと議論できて試行錯誤することを楽しめるようなチームが理想だし、そういう状況に身をおけるのがチャレンジしがいのあるチームなのだと信じています。

10年前の本ですが、一読の価値はあると思います。

ProductName 小飼弾の 「仕組み」進化論
日本実業出版社 / ¥1,880 (2009-03-19)

というわけで今年もよろしくおねがいします。

AF2に関する現在の私見

このあたりは読んでおくべし

結局のところ、モデラ―(職人)が丹精込めて編み出したホモロジーモデルと比べてどうよっていうか、リガンド結合サイト周りは人が丁寧につくったほうが高品質じゃないか?という。ホモロジーモデリングがよくわかってない人にとっては、簡単に予測構造が入手できるという利点はあるようだけど、立体構造予測に昔からまじめに取り組んできた人にとっては手間がほんの少しだけ削減されるだけの気がします。

End-to-endの技術はすごそうに見えるけど、それはその結果を応用してこそかなぁとちょっと思っています。AF2は物理化学的な知見は何も入れてないからPDBに登録されそうな構造を高品質に予測するだけっていう(ここはちょっと自分の認識が間違っているかもしれないが、ペーパーざっと見たところそう感じた)。

このあたりは化合物ジェネレータと一緒で,一つのツールとしてどう活用できるかを考えるのが重要で、化合物ジェネレータが「なぜその化合物を提案したのか?」と考えるのは無意味です。GANによる画像生成もまったく同じで、画像生成モデルでは静止画は高品質なものが生成できるのだけど、あの仕組みで動画を生成させるとダメダメなノイズになるとPFNの人が何年か前のIBISで基調講演してました。そういう意味ではああいうのに意味を求めてはいけないのかもしれません。

Mishima.syk #17 やりました

Mishima.syk #17に参加された皆様お疲れさまでした。

今回は2回目のオンライン開催だったので、準備に関してはちょっと慣れたしDiscordの使い方もうまくなったと思います。今回は前半はサイエンス寄りの話で後半はネタトークという構成になったのですが、今回も幅広い話題でかなり楽しめました。ただ、Discord使うとTwitterにログが残らないのはちょっとどうしようもないですね。

今回参加された方も次回は5分程度の短めのトークでよいのでなにか話すと良いかと思います。なにか得られるものがあるかもしれません。

  • einsum便利そう
  • gene2pubmedを使ってみないといけない
  • 高性能なマシンが欲しくなった(定期)

ちなみに自分の発表の元ネタとして採用した聖女の魔力は万能ですはだれも見てないのでは疑惑が浮上したので、次回はもう少し考えてチョイスしないといけないなぁというのが反省点かな。

それからもっと手を動かす時間を確保しないといけないなぁと。

Mishima.syk #17 やります

6/12にMishima.syk #17をやります。

今回もオンラインですが、次回は久々にオフラインでできるとよいですね。

私の発表タイトルは「量子の化学は万能です/Quantum chemistry is omnipotent」にしました。予習はこちらからどうぞ。

内容は

  • GCNとかDLのケモインフォマティクスって期待されてたほど上手くいってるの?盛ってない?
  • そこ畳み込みんじゃうの?まじで?
  • 化学構造をグラフで表現するの抽象化しすぎじゃないの?
  • 今更量子化学になにを期待してるの?
  • Psikit作ってたはずなのに何故GAMESSに回帰したの?

みたいな話をするつもりにしていますが聖女次第です。

ProductName 蜘蛛ですが、なにか? (カドカワBOOKS)
KADOKAWA / ¥1,188 (2015-12-10)

LLPS and DDS

先週はCBIの「液-液相分離(LLPS)と創薬」というセミナーを聞いてました。

感想としては「創薬との距離感相当ありますなぁ」という感じでした。完全に'Key and Lock'のコンセプトから外れてるし、天然変性タンパク質にこのコンセプトで干渉しようとするのもかなりハードル高そうに感じました。

どちらかというと、DDSの手法を用いて治療コンセプトを証明していくような方が自然なのかなぁと。オルガネラターゲティングとかの細胞内の局在コントロールみたいな。

ProductName 相分離生物学
東京化学同人 / ¥3,520 (2019-08-02)

なんとなくこれから求められていく治療コンセプトが、もっと上手に生体をハックしていく方向にシフトしていくのかなぁと。そうなってくると、分子生物学の知識がますます求められていくのだけど、それを理解するためには物理化学、化学も精通してないといけないという(LLPSなんて化学だしねぇ、でも解いているのは生物の問題という)。

ハードモードに突入するんでしょうかね?

肉じゃがとモダリティと私

いつもの産直詣でをしたところ、ちょうど出始めの新じゃがいもが手に入ったので肉じゃがを作ってみた。

作り方は至って簡単で、

新じゃがと豚バラを塊のまま蒸し器に放り込んで1時間以上放置。その後適当にザクザク切って片栗粉でとろみをつけただし醤油餡を回しかける

この肉じゃがの作り方の気に入っているところはオーソドックスな煮るタイプの肉じゃがと異なり、蒸していることつまり単に具材でなく調理プロセスという枠組みを再解釈しているところだ。

で、モダリティの話。

昨今のモダリティの議論は低分子から高分子といった具材に限定しているように思う。要するに「牛肉を豚肉に変えてみた」とか「砂糖の代わりにスプライトを入れてみました(これはこれで美味いw)」とか。

本当のモダリティとか、イノベーションっていうのはやっぱり枠組みを再考することでしか生まれないんじゃないかなぁと思いつつ肉じゃがを頂いたのであった。

ProductName 小山裕久の日本料理で晩ごはん
朝日新聞社 / ¥51 (2001-10T)

pygamessがTD-DFTとNMR計算をサポートしました

なんとなくこの本の15章をやりたくなったので、朝からゴニョゴニョしてた。色々できたのでバージョン上げておいた。

TD-DFT

データはおなじみのPubchemQCからダウンロードしてきてopenbabelでmolファイルにコンバートしたものを利用。

>>> from pygamess import Gamess
>>> from rdkit import Chem
>>> m = Chem.MolFromMolFile("examples/methyl_yellow.mol", removeHs=False)
>>> g = Gamess()
>>> g.dft_type("b3lyp", tddft=True)
>>> g.basis_sets("6-31G*")
>>> r = g.run(m)
>>> r.uv_spectra # (exitation ev, oscillator strength)

NMR spectra

これは時間がかかった(2020 MBAで30分以上)

>>> from pygamess import Gamess
>>> from rdkit import Chem
>>> m = Chem.MolFromMolFile("examples/C=CCBr.mol", removeHs=False)
>>> g = Gamess(num_cores=1) # PARALLEL EXECUTION IS NOT ENABLED.
>>> g.basis_sets("6-31G*") 
>>> g.run_type("nmr")
>>> r = g.run(m)
>>> r.isotropic_shielding

独習量子化学計算について

わかりやすくて良い本だった。ケミストだったら本書に沿って一通り手を動かしておけば、後々役に立つのではないかと思った。

こっちはいわゆるクックブックみたいな感じ

Free Ligand 1D NMR Conformational Signatures To Enhance Structure Based Drug Design

This was a very interesting paper.

The correlation of kon with free ligand preorganization implies 1D NMR signatures can augment structure−kinetic relationships; when kon is optimized by highly populated bioactive states, potency will be driven by koff.

Storing GAMESS calculation results in RDKit Chem object

Japan is under a state of emergency for the third time, which forced me to do self-quarantine. After all, my five days of GW holidays were spent developing the pygamess library.

This is an example of storing GAMESS calculation results into RDKit's Chem object. I will calculate the two molecules, ethane, and ethanol, to export as an SDF file later.

>>> from pygamess import Gamess
>>> from pygamess.utils import rdkit_optimize
>>> from rdkit import Chem
>>> ethane = rdkit_optimize("CC")
>>> ethanol = rdkit_optimize("CCO")
>>> g = Gamess()
>>> g.run_type("optimize")
>>> ethane_result = g.run(ethane)
>>> optimized_ethane = ethane_result.mol
>>> ethanol_result = g.run(ethanol)
>>> optimized_ethanol = ethanol_result.mol

Orbital energies and dipole moments including HOMO and LUMO energies are stored in the object. Each atom is also assigned a mulliken charge/lowdin charge.

>>> optimized_ethane.GetProp("HOMO")
'-0.46029999999999999'
>>> optimized_ethane.GetProp("LUMO")
'0.65559999999999996'
>>> optimized_ethane.GetProp("dipole_moment")
'1.9999999999999999e-06'
>>> optimized_ethane.GetProp("orbital_energies")
'-11.0355 -11.0352 -0.981 -0.8121 -0.572 -0.572 -0.4717 -0.4603 -0.4603 0.6556 0.6556 0.687 0.737 0.7814 0.7893 0.7893'
>>> for a in optimized_ethane.GetAtoms():
...   print("{}:\t{:.4f}".format(a.GetSymbol(), float(a.GetProp("mulliken_charge"))))
... 
C:  -0.1748
C:  -0.1748
H:  0.0583
H:  0.0583
H:  0.0583
H:  0.0583
H:  0.0583
H:  0.0583

Finally, I'll export the object to SDF.

>>> optimized_mols = [optimized_ethane, optimized_ethanol]
>>> w = Chem.SDWriter('test.sdf')
>>> for m in optimized_mols:
...   w.write(m)
... 
>>> w.close()

Looking at the exported SDF, we can see these results are persisted.

$ cat test.sdf
     RDKit          3D

  8  7  0  0  0  0  0  0  0  0999 V2000
   -0.7687    0.0082   -0.0152 C   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
    0.7687   -0.0082    0.0152 C   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
   -1.1742   -0.1016    0.9863 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
   -1.1352    0.9432   -0.4285 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
   -1.1499   -0.8048   -0.6260 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
    1.1499    0.8048    0.6260 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
    1.1742    0.1016   -0.9863 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
    1.1352   -0.9432    0.4285 H   0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0  0
  1  2  1  0
  1  3  1  0
  1  4  1  0
  1  5  1  0
  2  6  1  0
  2  7  1  0
  2  8  1  0
M  END
>  <total_energy>  (1) 
-78.306179626800002

>  <HOMO>  (1) 
-0.46029999999999999

>  <LUMO>  (1) 
0.65559999999999996

>  <nHOMO>  (1) 
-0.46029999999999999

>  <nLUMO>  (1) 
0.65559999999999996

>  <dipole_moment>  (1) 
1.9999999999999999e-06

>  <dx>  (1) 
-0

>  <dy>  (1) 
-1.9999999999999999e-06

>  <dz>  (1) 
0

>  <orbital_energies>  (1) 
-11.0355 -11.0352 -0.981 -0.8121 -0.572 -0.572 -0.4717 -0.4603 -0.4603 0.6556 0.6556 0.687 0.737 0.7814 0.7893 0.7893

>  <atom.dprop.mulliken_charge>  (1) 
-0.174764 -0.174764 0.058255000000000001 0.058255000000000001 0.058254 0.058255000000000001 0.058255000000000001 0.058255000000000001

TODO: Add GAMESS calculation conditions as attributes, like "HF/6-31G**".