「合成化学者のメディシナルケミスト像と計算化学者のメディシナルケミスト像は微妙に異なる」という話

趣旨としては「メディシナルケミストは尊い」となります。

詳細省きますが、最近違いを理解していない人が多すぎてげんなりすることが起こったのと、今週末のCBI講演会でこのあたりの話題が話されるので宣伝がてら書いてみます。

下の図は10年くらい前の某BIソフトウェアのユーザー会で発表したときの資料を少し改変したもので、私がメディシナルケミストをどう定義しているかというものです。

WhatMedicinalChemist

創薬プロジェクトで合成化学者の果たす役割はいわゆる創薬プロジェクトのPDCAサイクル(DMTA)において

  • What's to make (何を合成するか)
  • How to make (どうやって合成するか)

の2つに大別されるかと思います。典型的な合成化学者とか合成CROは与えられた化合物をどうやって合成するのかを考えることに100%コミットします。一方で計算化学者/Chemoinformatist/SBDDerは分析結果から次に何を作るべきかに全振りします。

メディシナルケミストはWhat's to make:How to makeの割合が7:3-6:4くらいではないかと思われますが、海外最大手のPは10:0に全振りしていると聞いたことがありますというか、前職の上司がそれが「なんか違うわー」ってことで辞めたと聞きました。

10年前の私は上のスライドに書いてあるように「何を作るべきかを考えられるのがメディシナルケミスト」というポジションだったので、将来的には分析できるChemoinformatist/SBDDerが合成CROをうまく使いこなせば十分にメディシナルケミストとなりうるだろうと考えていました。実際REINVENTが出たりDeepLearningによる逆合成が急速に発展したしね。

ただ、実際ケミストをマネージメントする立場になってみると合成化学知らないとかなり困るなぁと(一応合成化学専攻出てるけどw)能力不足を感じたり、やっぱり機械学習は所詮機械学習で、既存の反応の組み合わせしか辿れないというか未知の反応を提案することができないというか、それはAIが将棋で「銅」っていう新しい駒を作り出せないのと一緒なのかなぁと最近は考えを改めています。

というわけで、きちんと合成化学のバックグラウンドを持った人がWhat's to makeのための技術を獲得するというのが真なるメディシナルケミストなのかなぁと思うようになりました。

とはいえ、What's to makeに全振りしてDruglikenessだけきっちり押さえればSynthetic Feasibilityは別に無視して誰かに任せてもいいというような道もあるよなぁとは思います。

‘Too Busy’ is a Bad Excuse / リソースが足りないからやるべきことができない症候群

忙しくて(時間というリソースが足りないから)論文を読む暇がない

このような不満を漏らす人は一定数いますし、そういう人たちは自分の主張が正しいと信じて疑いません。 一方で、そのような主張をする人に「仮に『忙しいから論文を読めない』って言う人がいて、彼らの仕事を20%無くしたら論文読みますかねー?」と尋ねるとほぼ100%が「いやーならないでしょうね」と答えますので、論文を読まなくていい理由に"忙しい"を言い訳に使っている自覚はあるようです。

アカデミアからインダストリーに移った人でも同じことを平気でいうのでちょっと驚きましたが、「それってちょっと優秀な(博士持ちの)テクニシャンって感じ?」って笑顔で返したら、めっちゃ嫌な顔をされたあと、「わかったよ。ちゃんと読むよ」と言ってくれたので良かったです。

逆に、ハードワークしているけど論文読みまくっている人に何故かを聞けば、「そんなの当たり前だからでしょ」って返ってきますね。私も同じような感覚で、「論文読むのやめたら研究者人生終わりでしょ」と思っているので普通に読んでいます。

論文は読まないけど研究者として評価されたいとか、企業研究者として昇進したいとかはありえないですね。

人がいないから(人的リソースが足りないから)新しいことに取り組めない

ここからが本題でもうちょいややこしい人的リソースの話になります。

「人が足りないから(減ったから)、なにか新しいことができない / 残業せざるを得ない」という主張も似たような構図なのかなと気づきました。

新しいことにチャレンジしないとか残業を正当化する言い訳として「人が足りない」を持ち出しているのだろうなぁと。実際、人を入れたからといって解消しないです。

結局「忙しい」か「まじで忙しすぎる」の2つの状態しかないのかなぁと。

おまけ

自分にとって「暇だなぁ」は「やることはあるけど、それをやる気が起きないので、現実から目を逸らしている」状態ですw

We are hiring medicinal chemists and X-ray crystallographers

Finally, we have an opening for employments.

The recruitment site is in Japanese due to the company's policy of requiring a minimum level of Japanese reading ability, but registration and interviews are also available in English. The work place is a bit rural area, but you can enjoy Japanese culture, and if you want to go to Tokyo, it takes less than an hour by Shinkansen bullet train, so it is not so difficult to live there.

If you have any questions please feel free to message me.

華味からのRepubrewという昼飲みコース

プロジェクト採択祝いと昇格祝いを兼ねて華味からのRepubrewという昼飲みコースを楽しんできました。

ビール飲むのが決まっていたので華味では水煮肉片麺にしておきましたが、案の定水煮肉片の汁がシャツに飛んでしまいちょっと凹みました。

水煮肉片の作り方はこのあたりを見ればいいです。四川は一度行ってみたいと思っているんですよねぇ。

華味でランチを楽しんだあとはRepubrewに移動してビール三昧

途中さらにひとり乱入してきて楽しい飲み会となりました。やごみもリクエストされたのでまた今度行きましょう。

Mefjus & Camo & Krooked - Break Away

I've been into d'n'b since 1995. This tune is, imo, in the top 10 of all time d'n'b tunes!

そもそもMefjus好きすぎて前職の基幹システムは名前をもじってmefjuzにしたくらいだしな。

「もっとホメて欲しい」の心理について考えてみた

先日ツイートした件について深く考えてみる機会があったのでメモ。

私は褒めることと叱ることはだいたい同じ行為だと思っています。ある行動があったとして、褒めるというのは良い面に目を向けてそういう行動を奨励するという外的動機づけであり、叱るというのは悪い面に目を向けて、その行為を繰り返さないような外敵動機づけだと考えています。どちらも上下関係を前提とした行為であり、部下は上司を叱ることもないし、また褒めることもないでしょうから、トップダウンな組織構築を意図しているように思います。

私はそういう組織構造が好きではないので、上司部下同僚にはかならず「さん」という呼称を使いますし、呼び捨てにしたり君付けで呼ぶ部下が管理職に昇格した際には「さん」で呼ぶように強くお願いしてきました。そして、ホメたり叱ったりせずに感謝するという行為でフィードバックを心がけるようにしています。

という状況で「もっとホメて欲しい」という訴えを聞いて

なんで上下関係を欲しがるんや!、そいつらだけ明日から「君」づけで呼んだろかー?

と憤慨していたのが先日のことでした。

で、上記のことをネタにコーチングを受ける機会がありまして、コーチからいくつか指摘されました。その一つが、

「会社へのエンゲージメントを感じる2つの要素として「貢献実感」と「成長実感」がありますが、fmkzさんは貢献実感に偏っているように思います」

というものでした。

確かに、貢献実感は成果とか昇給昇格に強く結びつくもので、行動承認は軽視しているなぁとは思います。でコーチにこのあたりを食って掛かって見たのですが、コーチいわく

「褒める必要はないんですよ、成長したという事実の指摘にとどめればいいのです」

と言われて、ハッとなりました。

叱らない系のビジネス本だと、「叱らず事実の指摘に留める」と書いてあるように「ホメずに事実の指摘に留めれば」いいんだ!と。

よくよく考えて見ると「褒める」「叱る」は表裏一体なのでそりゃそうだとAha体験を得ました。そういう指摘は積極的にフィードバックしようと強く思いました。

しかしながら、自分にとってそもそも成長実感は自分だけが感じられれば満足できるものであり、他人から指摘されるべきものという認識がまったくなかったので、人生の意義を他人に委ねて何が楽しいのん?という憎まれ口だけ残しておきます。

そういう人たちはSOTAに近づくことはできても超えることは無理よね?

Looking Back on 2022 and New Year Resolution

あけましておめでとうございます、今年も良い一年でありますように。

去年を振り返ってみると、実のところ数ヶ月くらいしか立っていない気がします、、、そのくらい忙しかったです。 もともと専門職のラダーを登っていく予定だったのですが、予定外のイベントによりマネジメントのポジションもあがったせいで、やらなきゃいけないことと気を使わなければいけないことが急激に増えました。

まぁ今のところはこなせているので良いのですが、きちんと振り返ってみるとマネジメントに時間を取られすぎていたなぁと思いました。管理職なんだからそりゃそうだろっていう話ではあるのですが、どっちかというとしょうもない人間関係の調停とか、トキシックな人材のコントロールとかに忙殺されていたと。そういったあたりを今年はやんわりではなくて強めに変えていきたいなぁと思っています。あとは自分の部署の(チームではなくて)英語力を上げないとなぁと切実に感じています。プロジェクトにアサインしたら、英語で議論できない人が多すぎてせっかく採用した海外の方に退職されてしまったのでそこは改善しなきゃなぁと思っています。それは他社も似たような状況だと聞いていますが、製薬会社もグローバル化している状況でどうなんだろうねーと思わないことはないですね。尚今年は、上級専門職という地位を活用して海外の国際学会にたくさん行く予定です。マネジメントばっかりしていると技術のキャッチアップができなくてちょっと危機感を抱いているので。あとはちょっと試したいアイデアがいくつかあるので、チームメンバーの皆さんに振ってみようかなぁと考えています。

去年は「同僚、部下、上司を尊重できるような組織になろう」っていうことをスローガンに組織の立て直しを図ってきたのだけど、今年はここで書いたように「周りの人を尊重し率直な意見を言える状況で如何にサイエンティフィックな高みを目指すか」っていうことをやっていきたいなぁと思っています。

そのためには新しい人をバスに乗せなきゃなーと思っていて、質量分析系は求人出しましたが、以下の職種も募集する気がするのでもし興味があれば私まで連絡くれると色々答えられると思います。

  • 構造生物学者(結晶・電顕)
  • 合成力のあるメディシナルケミスト
  • 創薬ドメイン知識が十分なバイオインフォマティスト

それでは今年も頑張っていきましょう!

同僚、部下、上司には敬意を払いましょう

タイトルの通りシンプルなメッセージですが、採用にちょろっと噛んでいる側の視点からちょっと書いてみたいと思います。

社内で激昂したり、同僚や上司部下に暴言を吐いたり、傍若無人な振る舞いをしたりするのは本人の自由だと思います。 まぁ嫌がられるでしょうし、居場所が狭まるでしょうけど。

で、居場所がなくなったら転職して人間関係をリセットできると考えがちなのですが、最近はそういうハックは非常に難しくなっていると思います。人の流動性が高まっているせいで、仲のいい元同僚はだいたいどの製薬会社にいますし、その結果、人物像に関する情報が回りやすくなっています。実際トキシックな人の情報は飲み会でも入ってくるし、なんかあると直接情報を仕入れたりしてるので裏履歴書的についてまわるようになっています。

「経歴は優秀だけどトキシックな人物は結局トキシック」ということなので、特に優秀だと自認(自称?)しているけど他人にアタリが強いと自覚している方は気をつけると良いかと思います。

「お前が言うなー!!!」と全力で突っ込みたいひと(元同僚とか)もいるかもしれませんが、色々と思うことが立て続けに起こったので書いてみました。

自分の仕事に対する姿勢としては「いつでも転職できるようなキャリアを築いたうえで、現環境で最高に頑張る」ということを常々部署の人達には説いているのですが、標記の「他人をリスペクトする」っていうのもこの中に入っているよなぁと再認識しました。

今週のワタクシ(今年も終わりかけですね)

  • マジかよ~という出来事が立て続けに起こりちょっとだけ凹む
  • その後ビール飲んで立て直す
  • 予算編成とかやってるどころではない
  • CBIの締切にも追われててんてこ舞い
  • にもかかわらず1on1ミーティングがぎっちり詰まる(これは楽しいので良き)

1on1に限らず面談やっていて、多い悩みの一つが「なぜ自分は昇進しないのか?」ってやつなんですが、 「単に成果出してないからでしょ」の一言で片付く話なのですが、本人にとっては大いなる謎らしく。

どういう成果出したら昇進できるよっていう目標を設定してあげるのも上司の仕事なんだなぁと改めて思いました。 まぁすぐに昇進する人は勝手に楽しんで仕事して成果を出して、勝手に昇進していくのでそういう悩みは存在しないのですが、、、

楽しそうに仕事をしているように見えないから管理職になりたくない?

タイトルの通りで、他のチームのメンバーの人と話すと「上司が楽しそうに仕事をしているように見えないから管理職になりたくない/出世したくない」という意見をくれる人がちらほらいます。

まぁたしかにと思う一方、「楽しそうに仕事をしているようにみえる管理職っていうのはどういう状態を指すのだろうか?」という疑問が浮かびました。実際にそういうことを言う人に「仮に自分が管理職になったとしてどういう状態が楽しくしている管理職なの?」って訪ねてみたいですね。さらには、「自分が上司と同じくらいの社歴を積んだときに楽しく非管理職で働いている自分を想像できるのだろうか?その時は今の自分と何が変化しているのでしょうか?」とも。

自分が思うに、もしチームに問題がなくてマイクロマネジメントの必要がなければチームリーダーはそういった煩わしい雑務から開放されて、チームをどうするかとかのもっと大きい課題に集中できると思うんですよね。と考えると皆さん上司という鏡を通して自分たちを見ているだけなのではないかなぁと気がします。自分たちに問題があるから上司の仕事が増えて結果として上司が楽しそうに仕事をしているように見えないと、結局チームメンバーに問題があるから上司の仕事が増えているだけじゃんと。

とか考えていて、自分のチームはマイクロマネジメントなんてしたことないししなくていいから人材に恵まれてハッピーだわーと安堵する一方、もし「fmkzさんが楽しいそうに仕事しているようにみえないから、管理職になりたくないっす」とか言われたら私がいろいろと反省しないといけない気がしてきた、、、w

楽しそうに働こう、、、、