Drkcore

11 07 2026 work life Tweet

An answer is always on the stretch of road that is behind you. Only a question can point the way forward.

今週はいつもの立ち呑み屋で、メガトマ酎を飲みまくっていたので、大した週記は無いのですが、タイトルのことを改めて感じた週末でありました。

最近のCopilotとかAgentってすごいですねー、Claude codeはすごいし、codexも良い。そしてClaude Scienceにも夢がある。そのうえで、

AIエージェントが当たり前になりつつあるなか、(創薬)計算科学者に求められる人材像も変わるのだろうか?教育はどうなるの?

私としては、「計算科学者が不要になる」のではなく、価値を生み出すポイントが上流へ移るのだろうなと思っています。

これまでは、ドッキングシミュレーション、MD、FMOをするみたいな「解析を実施する能力」が求められていたのだけど、この部分はAI Agentにおまかせすることになるだろうから、「何を計算するか」といった問いを考える能力とかアブダクションとかの仮説構築力がもとめられるのかなーと。

そこで、有名な哲学者の

“An answer is always on the stretch of road that is behind you. Only a question can point the way forward.” — Jostein Gaarder

がぶっ刺さってくるわけです。

さて、 課題設定がうまくなるにはたくさん手を動かして、成功、失敗の経験を積まないといけないので、最初からAIがそれを肩代わりするのでは新人が育たないというジレンマに陥ると思うわけです。

そのあたりをChatGPTとおしゃべりしてみました。

その懸念は、まさに多くの研究現場で議論され始めている重要な点です。私は、そのジレンマはかなり現実的だと思います。

研究者の成長には、「成功体験」以上に失敗体験が重要だからです。

例えばドッキングなら、

  • タンパク質の前処理を間違えて全く当たらなかった
  • 水分子を残したら急に予測精度が上がった
  • プロトン化状態を変えたら結果が逆転した
  • Crystal poseを再現できず、原因を数日考えた

こうした経験を積むことで、「この系では何が本質的なのか」という感覚が身につきます。AIが最初から正解らしい答えを返してしまうと、その試行錯誤を飛ばしてしまう可能性があります。

だそうです。

さらに難しい問題

もっと長期的には、

AIが作った仮説しか評価できない研究者が増える可能性があります。

例えば、

AIが提示した3つの標的の中から選ぶことはできても、

「4つ目の全く異なる発想」を生み出せないという状態です。

創薬の大きなブレークスルーは、既存の選択肢の中から最適解を選ぶだけではなく、「その問い自体を変える」ことで生まれることがあります。そうした発想力を育てるには、やはり自分で文献を読み、実験結果に悩み、計算が外れる経験を重ねることが欠かせません。

では、どう差がつくのか

私は、これからジュニアの間で最も差がつくのは、「何を知っているか」ではなく「どれだけ主体的に考えたか」だと思います。

例えば同じAIを使っていても、

  • Aさんは「AIがこう言っているから」で終わる。
  • Bさんは「別の仮説はないか」「この前提が崩れると結論はどう変わるか」を考える。

数年後には、その差はかなり大きくなるでしょう。

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もう一つ、少し逆説的な見方

実は、AI時代はシニアよりジュニアの方が有利になる可能性もあります。

過去には、優秀な計算創薬研究者になるには10〜15年かけて「道具の使い方」を身につける必要がありました。しかしAIがその部分を支援するなら、ジュニアは早い段階から研究の本質的な議論に参加できる可能性があります。

ただし、それは「AIがあるから早く育つ」という意味ではありません。短縮された時間で何を学ぶかがより重要になるということです。

(私) 将棋の羽生先生はIT時代の到来を高速道路の先の渋滞に例えていましたが、AIでもそれと似たようなことが起こるわけですね

私は、その例えはAI時代にもかなり当てはまると思います。ただし、渋滞が起きる場所は少し変わるでしょう。

羽生善治さんの「高速道路」の話は、大意としては、

ITによって情報へのアクセスは圧倒的に速くなった。しかし、みんなが同じ情報に同じ速度で到達するため、その先で差別化が難しくなり、渋滞が起こる。

という洞察です。

AIはこれをさらに強力にします。

例えば創薬では、数年前までなら、

  • 論文を100本読む
  • PDBを調べる
  • 類似化合物を探す
  • ドッキングを回す
  • SARを整理する

だけでも人によってかなり差がありました。

しかしAIエージェントが成熟すると、これらは数十分から数時間で誰でも実行できるようになるかもしれません。

すると「情報を集める能力」や「解析を実行する能力」は、高速道路のように誰もが利用できるインフラになります。

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新しい渋滞はどこで起きるのか

私は、渋滞は次の3か所に移ると思います。

① 問いを立てるところ

「何を解くべきか」を決める段階です。

AIは「解く」のは得意でも、「何を解くべきか」を決めるのは、現時点ではまだ人間の役割が大きいでしょう。

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② 意思決定するところ

AIが

  • この化合物
  • あの標的
  • この実験

と10個提案してきたとき、

限られた予算や時間で「どれに賭けるか」を決める必要があります。

創薬は資源配分の連続なので、ここは依然として難しい判断です。

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③ 責任を負うところ

最終的に

「この候補で臨床に進む」

「このプロジェクトを中止する」

という決断には責任が伴います。

AIは助言できますが、その責任を代わりに負うわけではありません。

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ただ、AIは羽生先生の時代より一歩進んでいる

ITは「情報へのアクセス」を平準化しました。

AIはそれに加えて、「思考のたたき台」まで平準化し始めています。

例えば昔なら、

「このSARからはこういう仮説が考えられる」

という発想自体が研究者の実力差でした。

今ではAIも、それらしい仮説を複数提示できます。

つまり、渋滞は「情報」だけでなく一次的な仮説生成にまで広がっています。

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だからこそ重要になるもの

この状況で差がつくのは、「速く答えを出す人」ではなく、

  • AIが見落としている前提を疑える人
  • そもそも問題設定を変えられる人
  • 異なる分野の知識を結び付けられる人

ではないかと思います。

結論

なかなか厳しい時代に突入していきますね。フィジカルAIも順調にすすんでいけば、ジュニアレベルのブルーカラーも淘汰されるような気がしますし、中途半端に高度なスキルはペイしなくなるんじゃないかなぁ

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