分析を活用すれば質の高い決定とよりよいパフォーマンスにつながる。本書では組織が分析をうまく活用できるための重要な5要素を、その頭文字をとってDELTAと表現している。DELTAとはつまり
- D: データ
- E: エンタープライズ
- L: リーダーシップ
- T: ターゲット
- A: アナリスト
である。さらにそれぞれの要素について5段階の成長ロードマップを提示している。
- 分析力に劣る。データ、スキル、経営陣の関与など分析の必須条件が一つ以上欠けている
- 限定的。統一が取れていない、戦略ターゲットが絞り込まれていない
- 組織的な強化に取り組む。プロジェクトは発足するがDELTAのいずれかの要素で躓く
- 分析力を備えている。それなりの成果をあげるが、競争優位には至っていない
- 分析力を武器にする企業になっている
自分が創薬研究所での経験によれば、頑張った結果ステージ3くらいまでしかいかなかったので、ボトムアップ的なアプローチだとここらへんが限界かなと。統一が取られるような組織になるにはさらなる経営陣の積極的な関与が必須だと思うし、情報システム部とは別のスキルセットを持った分析系のチームがいないと難しいと思う。結局突き抜けるためにはDELTAのLが最も重要なんじゃないかなと思う。
個人的には、データをいつでも分析できる状態にしておくことは極めて重要であると考えていたので、研究所全体でそういった環境を維持することに関わってきたと。で、そういう環境になってログ分析してみると、分析する人はまぁ2割もいないですね。思うに分析に関する教育が足りないんだろうなぁと思っている。(実際に信頼性区間を観測値のmin-maxだって強固に主張していた薬理系のマネジメントもいたし、どんだけ異界やねんとげんなりさせられたこともありました。)
という理由で、DELTAにAが入っていることが非常に納得で、特に日本の企業はアナリストというジョブをもっと優遇して最大限活用しないといけないんじゃないかなぁと思ったりする。大体製薬企業で分析者の求人とかないからね。
というわけで、LとAさえあればData,Enterprize,Targetはなんとかなるんじゃないかなぁというのが私の意見。
すっきりとまとまっていて分かりやすい内容の本だった。どっちかというと組織戦略をどうするかっていう内容で、現場に分析力をどうやって持たすかな?という内容ではないけど、全体を見渡すには中々良いですね。
- 他社が持っていないようなデータを収集し活用するにはどうしたらいいか
- マスターデータ・マネジメント(MDM)
- データをいつでも分析できる状態にしておくことは極めて重要である
- IT部門の役割とは
- 意思決定とはデータと分析に基づいて下すものだ
- 現在の動向をまねしても遅れをとらないだけなので差異化を図る機会を発見しないといけない
- 計測できるものは何でも計測する
- 分析に精通し、かつビジネス感覚にも長けた人材を採用し、定着する条件を整える
- 分析の究極の目的はよい意思決定である