Structure-Based Drug Designに従事していると、トラディッショナルな目視での解釈に限界と疑問を感じる時が遅かれ早かれやってくるはず。
そうなると、解いた蛋白-リガンド結晶構造をGAMESSとかABINIT-MPなんかでFMO計算し始めるわけだ(そのうちただ単に計算したいという理由でPDBのデータなんかに手出したり)これにより、電子的な相互作用をエネルギーの大小で考えることができるようになるため、複合体に対する理解が深まるのでイイ。
でも、やがてこれだけでは満足できなくなり、より深い解釈を求め始めるようになる。つまり、生化学、構造生物学から、有機化学、量子化学へと足を踏み入れはじめるようになるわけだ。
ただし、このような場合に、勉強するのにちょうどいい本や資料がないなぁと困っていたところ、GAMESSについて書かれている本が出版されたというエントリをみっけたので、脊髄反射的にamazonで購入してしまった。
s2k's eye 2nd Ed.: 「すぐできる量子化学計算…」を買いました。
Q&A形式で、どこからでも読めるというのも好印象です。そして、何より、今までの成書ではあまり無かったGAMESSについての解説が多く入れられています(GaussianとGAMESSの解説書です)。応用計算については多くがGaussianについてですが、これはGAMESSというプログラムの性質上しょうがないところでしょう。
内容は、FAQ集という感じで、200pぐらいある割には半日かからずに読み終えた。もちろんGAMESSに関する記述も結構あるので、Gamess Input Examplesを補完する目的でも使える。まぁ、計算化学系の研究室にいれば、こういったノウハウとかこつみたいなものは、誰かに聞けばすぐに解決するようなものなんだが、、、、
製薬系って量子化学計算する人って思ったほどは多くないので、D章の計算実践編とF章の目的別対処法は参考になった。
このように、初学者が悩んだりつまずいたりしそうなところをQ&A形式で解説している本なので、実験グループで量子化学計算を担当された方を対象にしているという前書きは納得がいく。
ただし、Howto本ではないから、ザボとか一通り読んであって、Gaussian,GAMESS触ったことがあって、unix系のエディタでファイル操作が普通にできるヒト向けでしょう。あとは、より深く知るためのリファレンスが少なすぎる気がするなぁ。改訂版出すならそこら辺を充実してくれればありがたい。
Wikiあればいいのに、RjpWikiの量子化学計算版みたいなの。